第4章 bruise
「傑、ピアスしてくれたんだね。」
目的地までの道中、補助監督の森さんという男性職員の方の車で移動していた。
車の中で、夏油はずっと手を握ってくれている。
けれど、さっきの五条とのピリピリとした雰囲気は気になっていた。
「なかなか似合ってるだろ?」
しかし車に乗り込んで2人きりになった途端、いつもの優しい彼に戻っていて安心する。
「うん、かなり似合ってるよ」
持っていてとは言ったけど、まさかしてくれるとは思わなくてかなり嬉しかった。
手を繋いだまま互いに笑みを突き合わせる。
さっきから森さんがバックミラーでちょいちょいこちらを確認しているのがわかる。
イチャイチャカップルを乗せてしまったことに少々ウンザリしているのだろう。
「あのー、お2人とも?僕の話聞いてました?」
「聞いてましたよ森さん。今は誰も寄り付かなくなった△△病院の跡地でしょう?で、呪霊は恐らく準2級より上。」
すらすらと言う夏油の言葉に森は頷いた。
「はい、しかし1級の夏油さんと2級の神無月さんでもくれぐれも気をつけてくださいね。一体二体じゃないようですからね」
多分、広い病院だ。
呪霊はうじゃうじゃいそうな予感がする。
傑の足でまといにだけはならないようにしようと考えていたら、知らぬ間に手に力が入っていたようだ。
ギュッと握り返されるのがわかり見上げると、大丈夫と言うように優しく笑う夏油がこちらを見ていて肩の力が自然と抜けた。