第30章 reunion
・・・その時だった。
『クックックッ…これは面白い…』
突然、虎杖の頬から目と口が出てきた。
虎杖はギョッとした表情を一瞬浮かべたかと思えば、心底ウンザリしたような顔に変えた。
クマはビー玉のような目をそこへ真っ直ぐ向けているだけ。
「あー…ごめん、クマ。
こいつたま〜に出てくんだよ。」
「・・・」
『相当に珍奇な愛玩動物のようだな』
そこでようやくクマが眉を釣りあげだした。
「…あぁん?愛玩動物じゃねぇよ、
てめぇなんだ?」
「ごめん、クマ、話すと長くなんだけどさ〜
こいつ宿儺っつって、俺が指飲み込んじまってからなぜか俺の中に…で、」
「なん、だと…?!
両面宿儺…?」
「……え、知ってんの?」
「あたりめぇだろ。
千年以上前の呪術全盛期に実在した呪詛師…」
腕が4本、顔が2つある仮想の鬼神だが実在した人間。
呪術全盛の時代、術師が総力を上げても敗れた。
死後でさえ呪物として尚今も消しされていない…
最凶最悪の呪いの王…
クマはコピー能力があるため、数々の歴史書や文献など、自分の読み漁ったものはもちろん全てインプット済みだ。
しかし、さすがに毛並みを逆立て始めた。
「てめぇ…こいつの体に巣食って何するつもりだ?」
復活を目論んでる?
いやそれ以外にあるか?
それとも…
『別に何もしない。当分の間はな。
この小僧が死のうとお前が死のうと、心底どうでもいい』
「おい宿儺!俺が死んだらお前も死ぬんだぞ?それが嫌なら今後少しは協力するか、大人しく死を待ってろよ。お前の死に様はもう決まってんだ。俺が全部指を食って、」
『協力?はっ、断る。お前の中の俺が終わろうと、
切り分けた魂はまだ18つもある。』
黙ってやり取りを聞いていたクマはようやく状況が掴めてきていた。
虎杖悠仁の肉体を器として現世に顕現しており、普段は虎杖に抑え込まれて意識は表層に出てこない。
指を全て食った後…虎杖は…処刑される予定?