第26章 distortion
「転校生を紹介しやすっ!!
テンション上げてみんな!!!」
シーン……
全く無反応な自分の生徒に、五条は眉を顰める。
「上げてよっ!」
禪院真希 「随分 尖った奴らしいじゃん?そんな奴のために空気作りなんてごめんだね」
狗巻棘 「しゃけ。」
パンダ 「・・・」
仕方なく、そのまま"乙骨憂太"を紹介する。
しかし、彼に取り憑いている特級過呪怨霊、祈本里香。
それに対しての皆の反応は至極当然のものだった。
祈本里香と乙骨憂太は互いに幼い頃から想い合っていた。
大人になったら結婚しようとまで約束していたが、祈本里香は事故で死亡した。
"愛に呪われた" 乙骨憂太は、
その呪いを解くためにも、自らの力を掌握し呪術師の道を歩むためにも、呪術高専に入学することとなった。
というか、そうさせた。
今まで通っていた高校で、自分を虐めていた生徒4人を乙骨の中の祈本里香が殺害してしまい、呪術会から処刑されそうになっていた乙骨を五条が救ったのだ。
「ってなかーんじで!
彼のことがだーいすきな里香ちゃんに呪われてる乙骨憂太くんでぇ〜すっ!!」
攻撃を仕掛け、圧倒的な里香の力にボコボコにされた3名は苛立ったような視線を向けている。
「憂太に攻撃すると、里香ちゃんの呪いが発動したりしなかったり!なんにせよ、みんな気をつけてね〜!!」
ムスッとしている3名の前で、乙骨はずっとおどおどしている。そもそもここへはほぼ説明なく五条に連れてこられたのだ。
「コイツら反抗期だから、僕がチャチャッと紹介するね?」
乙骨は、(この先生がいろいろテキトーでヤバいせいでは?)と思って眉を顰める。
「んっとねー、この子は呪具使いの禪院真希。呪いを祓える特別な呪具を使うよ〜」
「・・・」
「んで、呪言師の狗巻棘。
おにぎりの具しか語彙がないから会話頑張って〜」
「こんぶ。」
「こっちが、パンダ。」
「パンダだ。よろしく頼む。」
乙骨はたちまち顔色を悪くする。
目の前にいるのは紛れもなく、パンダのぬいぐるみ。
しかも五条による説明が唯一なかった。
1番欲しい説明だったのに!!!
この先生も、この生徒たちも、本当に大丈夫か?
馴染める気がしない…
乙骨は不安しか無かった。