第23章 cruelty
月日が流れた。
レイは表面上は落ち着きを取り戻しつつあった。
今日は五条と墓参りに来ている。
「棗ちゃん…ごめんね…」
この謝罪にはいろいろな意味が込められている。
こんなことになってごめん
なにもできなくてごめん
あれから1度も遊んであげられなくてごめん
棗のペンダントは、自室の引き出しに封印してしまった。
自分はどうしても外すことができなくて、したまんまだ。
隣から五条が花を手向けた。
「ごめんな、棗。ゲームやってやれなくて…」
静かな掠れた声。
それはレイの胸を痛くした。
「俺さ…親友なのに…傑のこと、なんにも見れてなかったっぽい。あいつの苦しみや葛藤に、なんにも気付いてやれなかったんだ…」
「……それは私だって同じだよ。
恋人…だったはずなのに…何も…知らなかった。
傑のこと…助けられなかった…支えにすらなれていなかった」
また涙が溢れてきてしまった。
ポタポタと、その雫が供えてある花弁へ落ちていく。
すると、五条の手が頬に添えられた。
促されるままゆっくりと横を向くと、サングラスをしていない大きな蒼眼は徐々に細まった。
そのまま五条の親指が頬を滑り、涙が拭われる。
初めて誰かに涙を拭われた。
その初めての人は今隣にいる、五条悟…
夏油傑ではない…
どうして…なぜ…
今私はここにいて、こうしている?
「さ…とる……」
「ごめん、レイっ」
その言葉は同時だった。
そして、抱きしめられたのも同時だった。
「ごめん…ごめん…ごめん……」
蚊の鳴くような小さな謝罪の声。
「ど、して…謝るの……」
ギュッと腕の力が強まり、背の高い五条の声が上から降ってきた。
「… レイに…悲し涙を…流させたからだ」
クマとした約束を、俺は守れなかった。
傑にさせた約束も、守らせることができなかった。
結局俺は、なにもできなかったんだ。