第23章 cruelty
あの時、クマが言っていたことを思い出す。
"お前だったらどうにかできんじゃねぇの"
"…は?それどーゆー意味ー?"
"お前だったら、こーゆー世界を消しちまうことくらいできんじゃねーのかってことだよ"
"な……"
"人類抹消っつーのは朝飯前だろーし、地球の地形を変えることすらも可能なはずだ。つまりは本気を出せばなんでもできる…はず。だろ。お前はまだ本気を出したことがない"
お前にならできんだろ。お前になら、理想の世界を一瞬で作ることくらい案外容易いかもしれねーぞ。"
「君は、五条悟だから最強なのか?
最強だから、五条悟なのか?」
「……何が言いてぇんだよ…」
「もし私が君になれるのなら、
この馬鹿げた理想も、地に足が着くと思わないか?」
「…なん」
「生き方は決めた。
後は自分に出来ることを精一杯やるさ」
「おい…待て。
レイを…放っとくつもりか」
「……」
夏油はぼんやりとした瞳で真顔のまま五条を見つめている。
五条はサングラスをしていない。
「…君のその六眼には、
この世界がどう映っているんだい?」
「……は?」
「君の眼はやはり…ただのイミテーションか?」
「…なにを…言ってんだ?」
風が吹き抜け、夏油のハーフアップの髪が揺れた。
「こんなにお前のことを
わけわかんねぇと思ったことはねぇよ…」
「…いいさ、それで。」
「レイが泣いてんだ。
今すぐ飛んでけよ。
涙拭くのは自分の役目だって言ってただろ。」
"聞け、傑。
…俺はその涙を拭いてやれなかった。
なぜだか分かるよな?
それはお前の役目だからだ"
"分かっているよ…どんな涙でも
見てみたいな。レイが泣いているところ"
"なら約束してくれ。その涙は必ずお前が拭くと"
"わかった。約束するよ"
そうお前は言った。
約束したはずだ、俺と。