第22章 impurities
崩れ落ちたレイを、五条が抱き抱えた。
「あのっ、五条さん…」
振り返ると、顔面蒼白にした伊地知が立っていた。
「どうした…伊地知。」
「っ…あのこれ…落としました…」
五条は瞳だけ動かして伊地知の手のひらを見下ろした。
稲妻型のピアス… さっきレイの手から落ちたのか…
「俺、今 両手塞がりだからさ、少しの間預かっててくれるか」
「……はい。」
「悪いな。無くすなよ。」
そう言って踵を返した。
レイの部屋へ行き、ベッドに寝かせる。
まだ嗚咽が止まらず、苦しそうに荒く呼吸をしている。
「…… レイ」
言葉に詰まる。
何を言ってあげればいいのか、わからない。
こんなに何かを喋るのに困ったことは初めてだった。
ひとまずレイの枕元にティッシュの箱を置いた。
「レイ、俺もさ、どうしていいか…わかんね。」
たった1人の親友のはずなのに
あいつのことがわからねぇんだ。
何考えてんのかどうしたいのか何してんのか
親友のことを、全部わかってたつもりでいただけで、
本当はなんにも知らなかったんだ。
泣きじゃくっているレイを、ただ茫然と見下ろしていたら、クマが入ってきた。
クマは無表情のままレイの机に何かを置いた。
それはレイがいつもしているものと同じ、ロケットペンダントだった。
「…棗のだ。」
クマはそう一言言った。
夏油に、棗とお揃いで買ってもらったものだと話していたことを思い出す。
クマはベッドの上のレイを一瞥すると、またペンダントに視線を移した。
「傑に会った」
五条は目を見開いた。
「は?!な…?!いたのか!?話したのかよあいつと!!」
「あぁ…でも…おいらにはなにもできなかった。
何もかもが遅かった。」
こんなに弱々しく掠れた声は、普段のクマからは想像もつかないもので、五条はそれ以上何も聞けなくなった。