第22章 impurities
「それからクマ助、さっきの続きだけどね…」
"自分の中での何かをアップデートするべきタイミングだと教えてくれていたのさ。そういった君の約束は"
「君は約束以外にも、いろいろ教えてくれたよ。私の背中を押してくれた。おかげで苦しみから解放されたよ…ありがとう。」
「お前は……」
今までにないくらい、弱々しいクマの声。
「…お前はこれから、どうすんだ。処刑対象だぞ。」
夏油は静かな声色で呟くように言った。
「術師だけの世界を作るんだ…」
「……正気かよ」
「正気だよ。大義だ。」
クマは飲み干したパックを置いてまっすぐと夏油を見つめた。
「正直おいらはな、誰の味方でもねぇ。術師の味方でも非術師の味方でもねぇ。ただな、おいらは生まれた時からずっとお前らを見てきた。ずっとお前らといて、お前らと戦ってきた。全員でやってきたことを踏みにじるような真似はよせ。」
「ははは、違うよ、クマ助。論点がズレてる。
私の選んだ道はその全員を助けるための変革だ。もう進んだ道を戻るつもりはないし、戻れない。
君も来るなら歓迎するよ。君は猿ではなくてクマなんだから。しかも、最強のね…」
「なら… レイは…どうする」
「彼女は置いていく。理由は至極簡単な話。
足でまといだからさ。」
「いや違うな。危険な道だと分かっているからだろう?」
夏油は何も言わなくなった。
目を細めてうっすら笑っているように見える。
「おいらの視界に1番最初に入ったのは、お前とレイだ。だから誰の味方でもないと言っておきながらおいらはずっと…お前らばかりを見てきた。
両親だと…家族だと…思ってたんだ。
これを、人間の感情で表すならば、"贔屓" と言う。」
夏油はフフフッと笑ってから言った。
「じゃあ、私を殺しに来たのではないのかな」
「殺さない。ただな、レイを悲しませる大嘘つきは許せない。」
夏油は驚いたように目を見開いた。
「……久しぶりに見たな…君のその姿は…」
クマは毛並みを逆立て、青い炎を滾らせ、光る眼光を三日月型に変えていた。