第1章 ruby
「…わぁ、驚いたな。君がやっつけちゃったのか…」
いつの間にか窓は開いていて、彼は手すりの部分にしゃがみこむようにしてこちらを見つめていた。
今になって思い出すと、
彼の背景は、今日のような星の瞬く夜空だったと思う。
先程の衝撃的な出来事と、今目の前にいる見知らぬ男の存在に、声も発せないでいると、彼は柔らかい表情で静かに言った。
「ごめんね、遅くなっちゃって。でも…ある意味よかったかもな。どうやら君は…こちら側の人間らしい。」
「・・・は、い?」
顔を強ばらせたままベッドから出ないでいる私の手を、彼は優しく引いた。
「じゃあ、行こうか。」
「はっ…は?…ど、どこへ」
よろりとベッドから出たパジャマ姿の私に彼は振り返った。
その表情に思わず息を飲む。
切れ長の目が星の瞬きのせいか、ギラリと光を帯びていて、整った唇は弧を描いて影を作っている。
ゾッとするほど美しいとはまさにこのことを言うのだなと、その時感じたのを覚えている。
「君が、君でいられる場所さ…」
気が付くと私は彼の手を強く握り返していた。