第20章 curse
夏油は高専のベンチに腰かけ、俯きながらボーっと地面を見つめていた。
祓う…取り込む…
その繰り返し…
皆は知らない呪霊の味…
吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みしているような、
そんなことを繰り返して、
これは…
誰のために?
天内理子の死を喜び拍手する非術師たち
レイのように、人には無いものを持っている人を邪険に扱い閉じ込め退けるような非術師たち
本当に…
なんの価値もない…
呪いを次々に生み出すお前らを、それから命懸けで守ってるのは私たちなんだぞ…
本当に…
毎日毎日。
守る価値はあるのか…?
こんな日々を過ごす意味はあるのか?
灰原の死には、
価値が、意味が、あったのか?
"ま、恵まれて生まれたことに感謝するんだな。だがその恵まれたお前らが、呪術も使えねぇ俺みたいな"猿"に負けたってこと、長生きしたきゃ忘れんなよ"
あいつも結局、
禪院(伏黒)甚爾も
非術師だった…
恵まれてるだって?
"俺もレイも、傑みたいにリアリストじゃねーってことさ。できる限り、幸福な人生を享受していたい。あるはずの青春を謳歌したい。いつ死ぬかなんて分からねーんだからさ。"
"…死は万人に共通だ。誰にだっていつかは訪れる。その死をできる限り呪いによって理不尽を被ることの無いように非術師を助けていくのが私たちの役目だろう"
"お前はそれで満足なのかよ傑。"
"・・・は?"
"お前は俺をなんだと思ってる?俺だって人間なんだぞ。人生を選ぶ権利も選択肢もあるはずだ。死に方を選ぶ選択肢だって、あるだろ…"
そうだな悟。
少し、わかってきた気がするよ…
でも…私は…
「…耐えろ…。」
私はずっと、自分に言い聞かせている。
私が見てきたものは、何も珍しくない。
周知の醜悪…
知った上で、私は
術師として人々を救う選択をしてきたはずだ。
「……ブレるな…」
強者としての責任を果たせ…
それでも
わからなくなる
術師というマラソンゲーム
その果てにあるのが
仲間の屍の山だとしたら…?
「……猿め…」