第20章 curse
今日のレイの任務には、伊地知もついてきている。
これは後輩を育てるための実習も兼ねているのだ。
伊地知は道中からずっと緊張した面持ちでソワソワモジモジしていた。
「大丈夫ー?伊地知くん。そんなに緊張しないで。」
満面の笑みで顔を覗き込んできたレイにドキリとなりながら伊地知は言った。
「すみません…足でまといにだけはならないように…気をつけます。」
先日もクマから罵倒されっぱなしだったので、今回はレイさんでよかったぁなどと思っていた。
そうして着いた任務先の呪霊の巣窟のようなその場所で、結局伊地知は彼女に庇われてばかりだった。
やっぱり1級呪術師のレイさんは凄いなぁ…なんて思いながらも、伊地知自身ついていくだけで精一杯だった。
「おい!少しは役に立て!イジイジ野郎っ!」
「っ!?え!なんでクマがいるの?!」
突然出てきたクマに、2人とも驚いた。
「近くだから任務終わりに寄ったんだ。今回はおいらだけだったからな。逆にそっこー終わらせることができたわ」
「な…なるほど…。とりあえず伊地知くん、あそこにいるのは3級以下のはずだから、ちょっとやってみようか?」
「えっ、あ、はははははいっ!」
レイのにこやかな視線とクマの睨むような視線が突き刺さる中、ひとまず今の自分のできる限りの呪力を放った。
しかし…
命中したのはいいが、絶命させるほどに至らなかった。
「おいおい伊地知、冗談だろ〜。集中してんのかぁ〜?」
「こらクマ!……大丈夫だよ伊地知くん、焦らないでいこう!」
完全にバカにしたように呆れているクマとは対象的に、レイは終始にこやかだった。
やっぱり夏油さんににているなぁと伊地知は思っていた。
夏油と任務に来た時も、本当にこんな感じだったからだ。