第2章 call■
「はぁ…ふ…ありがとう…傑…」
「礼を言うのはこちらだよ…」
薄暗いが、恐らくこれは血だろうというものがティッシュについていて、それをゴミ箱に捨てながら頬を緩ませる。
好きな子が自分を受け入れるために頑張ってくれた証。
それを見て、嬉しくないはずがない。
正直、思っていたよりも余裕の無くなっていた自分がレイを優しく抱けていたかはわからないが、うっとりとして今にも瞼が閉じそうな彼女を見ていると、恐らく大丈夫だったのだろうと察し安堵のため息が漏れた。
ころりと胸に飛び込んできたレイを優しく包み込む。
「ふふ…幸せすぎてどうにかなっちゃいそう…」
レイは恥ずかしがりなわりに、言葉だけはどんなものでも恥ずかしげもなく口にするところが不思議だ。
「幸せ…か…」
彼女は本当に幸せなんだろうか?
人を助けたいと思って呪術を学びに来た訳ではなく、単に自分に連れてこられただけ。
そして、仲間の助けになりたいという思いだけで術師をやっていると言っていた。
その本音を聞いたのは初めてだ。
でも、むしろそれでよかったと思う。
ご立派な大義やらなんやらを君が背負う必要はない。
脆い君は壊れてしまうかもしれないから…
「…傑は幸せじゃないの?」
腕の中からくぐもった声が聞こえ、ゆっくりと頭を撫でながら静かに答える。
「君が幸せなら、私も幸せさ…」
だからずっと幸せでいてくれよ。
安心したようにたちまち聞こえてきた寝息に耳を澄ませながら瞼を閉じた。