第17章 existence■
「で、なんの幻聴聞かされてたのー?」
しばらくして落ち着いた後、歩きながらの五条のその言葉には、夏油は少し口ごもった。
「……覚えて…ないな…なんだったかな…」
「お前を惑わすくらいだから相当なんだろうな。
あーでも、クマ野郎が言ってたわ。こーいったタイプの呪霊に強いのはクマと俺しかいないって。」
やはりクマは流石だな…と2人とも思った。
夏油は乱れた髪を手でかきあげる。
「なぁ、悟。何かゴムみたいなの持ってないよな?どこか行ってしまってこのままだと髪が邪魔だ。」
持ってるわけないよなと思いながら、とにかく話を逸らしたくてそう問いかける。
「ったく、傑はドラえもんだろ?ゴムくらい持っとけよ。」
そう言いながら五条はポケットをゴソゴソし、財布を取り出した。
「……ん?持ってるのか?」
「そんくらいは俺でも持ってるよ。…んーと、ほらよ。」
「助かる。ありが……」
手のひらに乗せられたものを見てゾワリと一気に鳥肌がたつ。
先ほどの呪霊の時よりも全身が粟立ちはじめた。
「……おい………」
「ん?なに?」
「何じゃないだろ悟!どういう冗談だこれは!!」
乱暴にそれを五条の胸へと押し返す。
それは・・・
コンドームだった。
「え〜だってゴムって言ったじゃん。これゴムじゃん」
「…やはり君のその六眼をほじくり返しておけばよかったか?」
五条は何食わぬ顔でそれをしまいながらクスクス笑った。
「親友を殺そうとしといてよく言うよ〜。俺だったらなにがあってもぜってー親友を手にかけたりなんかしねーわー。」
「・・・」
その言葉には夏油は口ごもってしまい、険しい顔をしたまままた歩き始めた。
「……というか…なぜそんなものを持ち歩いてる」
「えっ!知らねーの?!財布に入れとくと運気上がるんだよ!」
「そんなことあるわけないだろ。」
呆れ顔でそう言いながらスマホをチェックする。
とりあえずはレイの方へと急ぎたい。
先程までは返信はあった。
少し細かい呪霊を退治していたとのこと。