第14章 surreal
「っ!来たぞレイ!気をつけろっ!」
クマは5、6体の呪霊を相手にしながら叫んだ。
レイは、向かってきたそれのあまりの俊敏さに声は出せずに避ける。
察するにこれは1級レベル…!
まさしく命の削り合いギリギリの戦いになるはずだ。
ここから一気にゴングが鳴ったかのようにレイの目の色が変わった。
「っく!呪霊操術……蛇鎧霊魂……」
手持ち呪霊の中で、なるべく硬度と速度のあるものを引き出す。
しかし相手も1級ともなれば簡単にはいかない。
いつのまにか、クマの姿は視界から消えていて、自分は細かい呪霊たちにも囲まれていることに気がついた。
急いでピアスを放とうとしたその時…
“”ししししにたい“”
“”生きていたくない“”
“”辛いよ“”
“”逃げたい“”
"消えたいよ“”
レイの頭の中にはダイレクトにそれしか響かなくなり、耳からは何の音も入らなくなった。
辺りは真っ暗闇。
幻覚と幻聴という認識さえ今のレイには分からなくなってきていた。
“”怖いんでしょ“”
“”いいじゃん一緒に死のうよ“”
“”もう全部終わりにしよ?“”
“”こっちの世界はずっと楽しいよ“”
“”永遠に幸せでいようよ“”
“”生きるのなんかやめて辛いことから逃げよう“”
レイは呆然と目を見開いたままで、1ミリも体を動かせない。
“”いいじゃんもう楽になりなよ“”
“”行こう、幸せな空間へ“”
“”逝きたいんでしょう?“”
「だ、ダメだよ…行けない…」
"こっちに来れば好きな人と好きな世界だけが見られるよ"
「……え?」