第14章 surreal
どこまでも気が強い天内は、黒井が止めるのも聞かずに学校へ行ってしまった。
仕方なく、五条と夏油は学校のプールサイドに忍び込んで待機する。
「チッ。夜蛾に電話したら、天元様のご命令だから天内理子の要望には全て答えろ!だとよ。
…ったく、ゆとり極まれりだな!」
スマホを睨みつける五条に、夏油は俯き気味で言った。
「まぁそう言うな悟。
彼女もあぁは言っていても、同化後は天元様として高専最下層で結界の基となる…
友人、家族、大切な人たちとはもう会えなくなるんだ…
好きにさせよう。それが私たちの任務だ。」
神妙な面持ちの夏油に五条は口を噤む。
妹と同じ年齢の少女に対し、その姿を被せて複雑な心境になっているのだろうと思った。
だってこの子は…もうすぐ…
「あの…理子様に御家族はおりません。」
突然頭を下げてそう切り出してきたのは黒井だった。
「幼い頃事故で……それ以来、私がお世話して参りました。ですからせめて、ご友人とは少しでも…」
「それじゃあ、あなたが家族だ。」
にっこりと優しく笑って被せるように言った夏油に、黒井は頬を赤らめて小さく、はい…とだけ言った。
……やっぱ俺には真似できねーな。
傑には適わん。
どこまでも優しい夏油を頼もしく思いながらも、五条は頭を掻きながら言った。
「で…傑、監視に出してる呪霊はー?」
夏油は小さく、あぁ…と言って真剣に思考を研ぎ澄ませた。
「んー…冥さんみたいに視覚共有ができればいいんだけどね…それでも異常があればすぐに……?!」
夏油の目付きが途端に鋭く変わり、そのせいで空気すらも変わった。
バシッと五条の肩を叩く。
「悟、急いで理子ちゃんの所へ。」
「あ?」
「2体祓われた」
えぇー…と言って面倒くさそうな顔をする五条を引っ張るようにして、夏油が走り出した。
「悟は礼拝堂!黒井さんは音楽室!私は正体不明2人を!」
「れーはいどぅー?」
「承知致しました!」