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walking proud~呪術廻戦~R18~

第12章 nihilism


「でも愛は違う。空虚でニヒルな心をどこまでも満たしてくれる。愛したり、愛されたりすることで、それだけで生きようって思えるんです。」

橙色の光に目を細める。
愛は、まるで太陽のようだとも思った。
直視するのは難しいけれど、ないと生きてはいけないもの。


「お金はなくなったら努力でどうにかできるけど、愛は1度なくしてしまったらなかなか元に戻らないし、努力でどうにかなるものでもないですよね。」

夕陽はあと残り3分の1くらいだ。
あと何秒だろうか?


「うん…そうかもしれない。
私も愛する者は決して手放したくないからね。」


そう言って冥冥は憂憂の方を見る。
なにやらクマとお喋りをしているようだ。

優しい目をしてそちらを見つめる冥冥を見ながら、レイは問いかけた。

「ある程度の所までは、所有が人を自由にも独立的にも豊かにもしますけど、行き過ぎると所有が主人になって、いつのまにか所有者が所有される側になっている気がしませんか?」


ハッとしたように冥冥が視線を戻す。

レイはもう既に前を向いている。
夕陽が今にも沈みそうになっているからだった。

だんだん薄暗くなってくるのがわかる。


「あっ…すみません。喋りすぎちゃいました」

レイは気が付いたように眉を下げだした。

「ふふ、いいんだよ。私はもっとレイちゃんの話が聞きたい。」

そんな君だから大好きなんだよ私は。
そんな君を悲しませるような輩がいたら、私は…

そう思いながら冥冥は微笑む。

レイは照れたようにまた、残り僅かの夕陽を見つめた。


「でも……思うんです。
お金に飢えるのと愛に飢えるの、どっちが辛いんでしょうね。」


ついに、夕陽が沈んでしまった。
辺りが少しだけ暗くなり、それとともに辺りの音も静寂になっていた。
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