第12章 nihilism
フッと弧を描く分厚いその唇を見つめて笑みを零す。
冥冥は出会った頃から、随分とレイを気に入っている。
理由はレイ自身も分からないのだが、今までもよく遊びに誘われていて、なかなか都合が合わずにいたのだ。
今回、みんなを連れてくる形にはなってしまったが、ようやく冥さんと遊べることを嬉しく思っていた。
しかし冥冥は少し眉をひそめて言った。
「本当は、レイちゃんと2人きりが
…良かったんだけどねぇ?」
その艶めかしい表情と声色にドキリとなる。
「な、なぜですか?」
「んんー…だってレイちゃんはなんだか…私の五感を滾らせるんだもの…私の所有物いや…料理したくなってしまう…というかね。」
ペロリと舌なめずりをする冥冥にゾクッとする。
しかし相変わらず発言が意味深で笑ってしまった。
五条はさっきから船酔いの余韻が治らないらしい。
サングラスをとってうーうー唸っている。
「つーかさーなんでお前もいるわけぇ?
ガキはプー野郎だけでじゅーぶんなんだけどぉ?」
五条は額にタオルを当てながら憂憂を睨んだ。
「私は姉様と行動を共にしているだけで、決してあなたのような謎の障害物に会いに来たわけではありませんよ。私は姉様の所有物ですので。」
「あぁ?!」
「私達も行きましょうかクマくん」
「おう!」
憂憂はいきり立つ五条を無視してクマの手を引き、冥冥たちの方へと行ってしまった。
「はっ、ガキが言うセリフかよ、相変わらずうぜー」
夏油はさっきから笑いが堪えきれずにいる。
「はっはっは…まぁただの子供だとは思わない方がいいね。それよりこの暑さだと皆倒れてしまわないか心配だなぁ」
そう言って、はしゃいでいるレイの方へ目を細める。
初めて見る水着姿の彼女……
言葉にならない感情が押し寄せて押し黙る。