第12章 nihilism
「ふふふっ…」
五条は肩を震わせて楽しそうに笑っている。
しかしレイは真剣な顔をして睨み上げた。
「何笑ってんの…こういう悪ふざけはやめて」
「こういうのって確かー…前にもあったようなー」
「あった。だからやめてって言ってんの」
しかし五条は満更でも無い様子でその宝石のような碧眼で真っ直ぐと見下ろしてきた。
どくどくと自分の鼓動がうるさくなってきたのが分かり、五条の胸を押し飛ばそうとした瞬間、その両手は瞬時にベッドに縫い付けられた。
「なんで?あんときはチューしたじゃん俺と。」
「っは…あれっは、事故でしょ、ちょと退いてよっ」
依然睨みを効かせたまま手に力を入れるが、当然1ミリも動かない。
「……事故だと思ってたのかぁー。そお…」
わざとなのか、正気なのか、
みるみる眉を下げ、心底残念そうな顔をしだす五条。
グッと押し返そうと力を入れ続けていたら、だんだんと息が荒くなってきた。
「っぐ……」
「じゃーさ…絶対事故じゃないってわかるようにしていいー?」
その言葉に目を見開く。
「ダメに決まってるでしょ!何言って」
「まだ俺3つ目の願い叶えてもらってないんだよね〜」
声を発する間もなく、顔が近づき、唇が重なる瞬間にレイはギュッと目を瞑ることしかできなかった。
「・・・」
「・・・」
しかし、いつまで経ってもその瞬間は来ない。
恐る恐る目を開くと、いつの間にか手首は解放されていて、五条の顔は離れていた。
そして何事もなかったかのようにケタケタ笑っている。
「めんごめんご。じょーだん!ふははっ
おもしれー顔!」
レイはガバッと起き上がる。
「ほんっとふざけないで。いい加減にしてよこーゆーの。
次やったらマジでアソコ蹴り飛ばす。」
「ひぁはっ!それだけはやめてぇ〜!」
わざとらしく笑い転げる五条を睨みながら、荒い息を整えベッドから出る。