第11章 throbbing
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「傑!!!!!!」
人の行き交う雑踏の中、
私は今までにないくらいに大声で叫んだ。
自分でも驚くほどの声が腹の底から出てきた。
鼓動も同じくらいに大きく自分の中で響いている。
周りの人たちの姿なんて目に入らない。
真っ直ぐと、目の前の大好きな人の背中を
ただ見つめる。
彼は立ち止まったまま俯いていて、数秒動かず、
そして顔を上げたかと思えばゆっくりと振り向いた。
そして傑はいつもの優しい声で私を呼んだ。
「レイ」
その顔はいつも見てきた、
何度も見てきた、
優しくて大好きな、
大好きな大好きな、いつもの微笑み。
「そんな顔…しないでよ……」
「ふ……それはいつも私のセリフのはずなんだが」
「どうして!!なんで!!!!!
なんでよ傑!!!!!!」
感情の赴くままにただ叫んだその言葉は
きっと震えていただろう。
そして彼は柔らかい表情でまっすぐ私を見つめたまま言った。
「戻りなよ、向こうへ。」
彼が私の背後に指を指した。
ゆっくりと顔だけで振り返ると、
唇を噛み締め、顔を歪めてこちらを見ている
悟が向こうに突っ立っている。
今にも泣き出しそうな顔にも見える。
顔を戻してまた傑を見つめる。
彼は真剣な表情に変わっていた。
「戻らない…
傑……っ…私も…つれていっ」
「ダメだ」
「なんっ」
「戻れ。」
氷のように冷たくて、有無を言わせぬ強制力を込めたような声。
カッと見開いた眼光だけでもそう言っているように見える。
そんな声が、そんな顔が、
私に向けられたことは、今まで1度もなかったのに。