第8章 unexpected
"心に余裕がある時に空を見上げるんじゃないよ?空を見るから心に余裕ができるんだよ。"
"空を見上げるとさー、全ては繋がってるって実感できるんだよね。空は何があってもどこへ行っても一緒にいてくれる。いつだって味方になってくれる"
「おいらもうわかってる。レイが涙を流して感情炸裂するときは、多分ひとつしかない。」
「だな…俺もわかってる。」
「そしたらお前は空になってやれよ。万が一の話だが。」
「もう空のつもりだよ」
「まだまだだね。レイは本当に上を見てない。
見てるふりして見てねーんだ。」
沈黙が流れる。
画面には、まだクマの勝利画面が映っている。
「なぁ、プー野郎。お前はその時、何してんだろな」
「さぁな。お前こそ何してんだろなグラサン野郎」
「お前とまた喧嘩してる」
「そしたらおいらがまた勝ってる」
くくくっと同時に肩を震わせて笑う。
「1つ約束してくれクマ。」
突然真剣になる五条に、クマは口を閉ざす。
「レイに悲し涙だけは流させない努力をするって。」
「あ?お前さっきと言ってること違くねーか」
「違くない。俺は悲し涙を見たいわけじゃない」
悔し涙、嬉し涙、感激の涙…複雑なやつ
いろいろあんだろ。
つまりレイを悲しませることのないように、精一杯努力をしていこうということ…
互いの目が細まり、ジッと見つめ合う。
奥に見えるなにかを懸命に探ろうとするかのように。
「貸し1な。」
そう言って差し伸べてきたクマの手を握る。
「おう。」
固い握手のはずが、全く固くない。
「おまっ!肉球やっば!やわらけー!
もっと触らせろ!」
「んなっ?!この変態野郎!セクハラ!
傑に言いつけるからな!」
「マジそれだけは勘弁!ははっ!」
結局ホールドされたクマは五条の満足いくまで肉球をふにふにされていた。
「はぁ…人間は約束が好きだな…」
その小さなつぶやきは五条の笑い声でかき消されていた。