第52章 forgery
それに気づいたように美々子が言った。
「…私たちは…夏油様の体を…取り戻したい…だけ。」
「そう…だから協力してほしいの。クマも私たちと同じで夏油様の家族だったはずでしょ?」
その言葉に、クマはため息を吐く。
「いくらおいらでもそんな意味不明すぎる奴には近付きたくすらない。」
「あっ、姿はもちろんまんま夏油様だよ。」
「…だからこそ見たくも話したくもないんだが…。
そんな不気味な存在…」
「うん、だからこそ…私たちも許せない…
夏油様を弄ぶような真似をして…」
「私たちにとってはあの時の夏油様だけが真実なの。クマも同じでしょ?」
クマは真顔のまままたパンケーキをつつき出した。
あー…珍しく食欲なくなってきたぜぇ…
やっぱ信じらんね。こんなことってあるかよ…
「…夏油様を殺した五条悟を、私たちは一生許さない。
でもね…これでいいとも思ったの。
だって五条悟は…夏油様のたった1人の親友だから…」
その言葉に、クマは動きを止めて沈思した。
「だけど、アイツは違う。だから」
「わかったわかった。お前らの気持ちはよく分かってる。つーかおいらだっておんなじだ…。だから…少し考えさせてくれ。」
クマはハァとため息を吐いて眉を顰める。
こんなどうしようもなく難解な悩みができるとは思わなかったぜぇ…
でもおいらの願いは…いつだってたった一つだ。