第22章 呪い合い、殺し合い、
「!」
なずなも初めて見る彌虚葛籠に瞠目していた。
あれは何?
呪力の籠……?
あの人の術式はレシートに書かれているものを出す術式のはずだから、きっと術式じゃない。
簡易領域みたいなものかな……
なずなのような自己強化の術式は必中しても特に害はないが、レジィはそんなことを知らないし、勝手に警戒して意識を割いてくれる分にはなずな側にデメリットはないので、教える必要もない。
初見の彌虚葛籠を警戒してすぐに動けなかったなずなの後ろで伏黒が苦しげに声を漏らした。
「っ、俺の影の中に車を3台落とされた。それの重さで動けねぇ……」
「なら、ここは私が引き受けるよ。恵くんは領域を解いて」
「なずな、無理はするなよ。それと……」
レジィに聞かれないよう口の動きだけで意図を伝える。
それを正確に受け取ったなずなは強く頷く。
「うん、分かった……!」
領域内すべてに広がっていた伏黒の影が消え去ると同時になずなが動いた。
領域に底上げされた身体強化術式で外にいた時とは比べものにならない程の速度でレジィに迫り、次々とレシートを切りつけて剥がしていく。
レシートを選ぶ時間なんて与えない……!
すぐ手の届く範囲にあったのか、包丁や鉈が飛んでくるがそれにも反応して叩き落とす。