第20章 10月31日 渋谷にて
急に方向転換した虎杖に脹相は警戒しながら、入った先を見る。
「馬鹿が」
そこにあるのはトイレとエレベーターのみ。
どこへ逃げ込んでも袋のネズミだ。
すると、トイレの方から何かを壊すような音が聞こえてきた。
……何の音だ?
アイツは弟達に勝っている。
馬鹿ではあの2人には勝てん。
そして、突然現れたもう一つの声……
何かあると考えるのが普通だ、油断するな。
「なんダ!来ないのカ!」
トイレの方から先程現れた声がする。
「弱虫なんだナ、弟と同じデ」
それは脹相を激昂させるに十分だった。
「殺す……!」
声がしたのは男性トイレ、すぐに穿血を放てる体勢で乗り込むと驚きの光景が広がっていた。
水道管が破壊され、蛇口からスプリンクラーから至る所から水が噴き出している。
「3人共兄弟想いデ扱いやすイ」
メカ丸はトイレの壁に貼り付いていた。
穿血でメカ丸を破壊すると、脹相の背後から虎杖が。
ここではなく、後ろにある多目的トイレに潜んでいたのだ。
拳を食らったが、脹相は距離を取って立て直す。
「残念だったな」
今のが最後の勝機……
逃げ場がなくなったのはオマエの方だ!
大雨のように水が降る中、脹相が優勢を確信した瞬間、
術式を解いたわけでもないのに、背後に出していた血の玉が崩れた。