第28章 断章 浜辺の誘惑
―おまけ―
頭を冷やすために海に飛び込んだはずなのに、伏黒に救助されたことで余計に顔が熱いという事態に陥ってしまったなずな。
今度は迷惑をかけずに頭を冷やそうとかき氷を買ってきていた。
レジャーシートの上に座ってレモン味の細かな氷を一口、二口と口に運ぶ度に火照った顔が冷えていく。
……だが、しばらく食べ続けているとさっきまでとは打って変わって困ったことになってしまっていた。
うぅ、ちょっと多かったかな……
まだ半分くらいあるのに寒くなってきちゃった。
どうしよう、
残すのはお店の人に悪いし……
日差しは変わらずだが、かき氷を食べた上に強くなってきた海風が濡れた身体に直に当たり、なずなの思っていた以上に体温を奪っていた。
かき氷を持っている手も冷たくて仕方ない。
隣にいた伏黒もなずなの食べる早さががくっと落ちたことに気づいた。
細い腕にはいつの間にか鳥肌まで立っていて寒さを感じていることは一目瞭然。
「大丈夫か?身体冷えたんじゃないか?」
「う、うん、ちょっと寒くなってきちゃった。でもまだ結構残ってるし……」
そう言って更にかき氷を口に運ぼうとすると、伏黒に止められる。
「無理して食うな。余計に冷えるだろ」
「でも……せっかく作ってもらったのに申し訳ないし……」
「なら後は俺が食うから」
伏黒がなずなの手からかき氷を取り上げ、脇に置き、おもむろに立ち上がった。
「ちょっと待ってろ」
どうしたんだろうと疑問に思いつつも、素直に待つことにする。