第26章 断章 優しい優しい帰り場所
伏黒がなずなの手を引いて連れてきたのはベッドではなくソファの上。
まだ濡れているなずなの髪を乾かすためだ。
なずなをソファに座らせ、ドライヤーとブラシを持ってくる。
ドライヤーの電源を入れる時には、なずなはもう目を閉じていた。
もし完全に寝てしまっても、髪を乾かし終わったらベッドに運んでやればいいと、構わず伏黒はドライヤーの風を当て始める。
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温風が心地良い、
髪を梳く手が気持ちいい、
たどり着いた先はベッドではなかったが、ソファに座ったままでも、今なら心地良く眠れる気がする。
洗われていた時と同じような、少し強めの力で髪をかき混ぜられる。
温風と痛くないくらいの適度な心地良さに一層眠気が増していく。
うつら、うつらと意識が途切れては浮上し、また途切れ……を繰り返していると、ドライヤーの音が止まった。
ブラシで丁寧に髪を梳かれたと思ったのが最後、なずなの意識は浮上することなく、沈んでいく。
なずなはいよいよ限界を迎えていた。
ドライヤーとブラシを片付けて戻ってきた伏黒が声をかけても、肩を揺すっても返事がない。
あの疲労状態でよく保った方か、と思い直し、なずなの膝裏に手を差し込み、反対の手で肩を持って抱き上げた。
あとはベッドに行くだけだ。
明日は自分もなずなも久しぶりの非番。
ゆっくり寝て、のんびり過ごそうと伏黒自身も眠くなってきた頭で考えながら、寝室へ向かう。