第7章 ひとりぼっち
倫太郎は、優しいし懐が深い。
カウンセラーみたい、って言ったら嫌な顔するだろうな。
でもそんな感じ。どこか、お兄ちゃんっていうか。
自分は自分だから他人は他人っていう、
そのあっさりとごく当たり前の線引きができているからこその、
言葉の持つ力、みたいなの、ごく普通に使ってくる。
『やっぱ、なんかあれだ』
「結局そこかい」
『便利だよね、なんかあれ』
「便利だけども」
『ねぇ、倫太郎のバレー今度見に行きたい』
「来てもいいけど」
『やった』
「なんかあれだよ」
『あーそっかぁ、なんかあれか』
「とりあえず今はオフシーズンだから。 でも、ジャッカルズが出場するアジア選手権、一緒に観に行く?」
『ジャッカルズ?』
「高校ん時のチームメイトがいる」
『へー、いくいく。倫太郎が言うチームメイトって響き、なんかあれだ』
「いやそのチームメイトも大概、なんかあれだよ」
『そっか、なんかあれか』
「そんでそのチームメイトの今のチームメイトも大概なんかあれな人ばっかりいるよ」
『それは、なんかあれだね』
なんて、淡々とした拍子でふざけたりして、今日という日が過ぎていく。
きっと、これからも。
ひとりぼっちの2人は、こんな調子で時を、空間を。
共有していくんだろうなって。
それって、想像するだけですごく幸せで。
それだけで幸せで。
でもうしろめたさはちっともない、ひとりぼっち、なのに。
やっぱ、倫太郎ってなんかあれ、だ。
詳しく説明しようとするとまどろっこしいくらい、
魅力に溢れた、人。
ーfin