Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第37章 遊びを通しての学び
「良いか? 和也。『夜か昼か地蔵様か鉄砲か石か』をただ漠然と楽しんではならぬのだぞ」
そう、三ヶ月後の水無月に四歳になる息子の和也に言い含めているのは、櫻井家の軍事面を支える、二宮勇。
和智翔ノ国の慣習にのっとり、 二十歳の時に、翔希の方より家督を譲られし、和智翔ノ国、領主の翔菜姫の夫の爽の弟。
和智翔ノ国は、合議制で議題が話し合われ決定していく。本来ならば翔菜の方も会議に出席するのであるが。翔禾禾姫を育てる事に重きを置いている為爽が一人参加している。
翔菜の方の意見を携え、代理で提案し。もちろん 爽自身の意見を述べる事も許されている。
表向きは……
二十三歳……婿養子の立場で一筋縄では行かない重鎮達家臣団をまとめあげるのは……至難の業……という事で。
突然に全ての仕事を若夫婦に譲るのではなく一緒に、翔希の方と陽が付いていても……なのだから
爽は。
(心してかからねば……)
ともすれば折れそうになる心を叱咤激励し日々を頑張っていた。
そんな爽の弟の勇。
(才覚はある兄なのに……重鎮達に飲み込まれて 潰されてたまるものか!)
二十二歳と若いながらも兄を……翔菜の方を……翔禾禾姫を守ると決意して。
主な仕事は、櫻井家のご領主家族の護衛兼、有事の際の戦略を練る事をしながら表の内政を司る者達を見張る……中々の人物であった。
「ちちうえ なにに きをつければ よいのですか」
「 ゆう なにに きをつければ よいのだ」
「……」
勇は、 幼きながら勘が鋭く察しの良い我が子の和也と、四歳半になられた潤様の質問と。庭師の、大野詠史《おおのえいし》の息子。四歳の智の 鋭い視線に満足しながら。
「翔禾姫様がどこにおわすか常に確認して行動する事です。鬼で目隠しをしていても感覚を研ぎ澄ませて気配を察し、逃げている時も我を忘れて、翔禾姫様を見失わないようにせねばならないのですよ」
「「「はい!」」」
遊びを通して翔禾姫を守る術を教える。役割をも果たす勇であった。
「わたくちも、じゅんにいしゃまと、かじゅと、しゃとをまもりましゅ」
年明けの睦月に、三歳になったばかりの翔禾姫が、舌足らずに宣言するのを。
「頼もしいですね。翔禾姫様は」
和也も、智も、潤も、勇も。微笑ましく見つめるのだった。