Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第36章 待望の姫君誕生
純梨の方は、母となった喜びに打ち震えていた。
爽は、 潤の誕生を喜んでくれて。 自分自身に愛情を示して下さる事も幸せで。
翔菜の方も、いつも優しく接して下さる。 色々と思う事はおありだろうに……
その思いに感謝しているからこそ 自分の立場におごらずに、潤の教育もしっかりとしていかねば。と思っているのだけれど……
「純梨の方! 先にお子を成したのはソナタですぞ。櫻井家の跡継ぎ……いや、和智翔ノ国を治めるのは、潤若であると働きかけて行かねばなるまい」
たった一つの懸念……
櫻井家に入った際に、家臣として共に入って来た叔父の外喜《とき》……
野心を口にするようになったのだ……
『私は、ソナタの父の弟。 同じ日に生まれたのに……後から生まれたというだけで……松本家の当主には兄がなったのだ。オカシイであろう? 純梨の方、正室より先に子供を成したのだから。櫻井家は潤若が治めるのが筋と思わないか? 私がしっかりと補佐いたすゆえ。な?』
全くもって、めちゃくちゃな論法で来た叔父……
もし。
叔父が こんな野心を抱いてると殿様がお知りになったら……
(想いを掛けて下さらなくなるかもしれない……)
自分をしっかり持って、撥ね付けねば……
純梨の方は、爽に嫌われるのが怖かった……
──
月日は流れ、純梨の方が出産して、九ヶ月後。
*|皐月《さつき》の半ば、体調を崩していた翔菜の方。
薬師の見立ては……
『おめでとうございます。懐妊されてごさいます』
婚姻から、二年七ヶ月……
爽に抱きつき、大号泣涙して喜んだ翔菜の方。爽も涙して喜びを分かち合った。
そして……
婚姻から、三年と三ヶ月後の
睦月の二十五日
待望の第一子。
翔禾姫が誕生したのである。
*皐月《五月》