Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第24章 運命(さだめ)の決断
十九年前 *神無月《かんなづき》半ば
和智ノ国 桜城
翔菜姫の部屋
(私が……覚悟を持って 決断しなければならない事よね)
その日翔菜姫は一つの決断を下した。
まだ十六(三ヶ月後の睦月に十七になる)の少女には身を切られるような痛みの伴う決断だったが。
そんな翔菜姫の様子を、心配げに見つめていた夫の爽が。
「翔菜姫? どこかお身体の具合でも悪いのですか?どうしたのです?」
そう尋ねると。
「爽様…… 私達夫婦(めおと)になって1年が経ちましたね……」
「はい……」
「代々、女性が櫻井家を、和智翔ノ国を支配して来ました。私が果たさなければならない最大の役目は跡継ぎを儲ける事です……」
決心した事とはいえ、出来ればこの言葉を言いたくはなかった……出来る事なら自らが、 お慕いしている爽様のお子を生みたかった……
「 いまだ、懐妊の兆しはなく……ですから……爽様、側室をお持ち下さいませ。そして……」
爽は、驚きすぎて思わず翔菜姫を凝視していた。 思いもよらぬ言葉であったし、深く深く翔菜姫を愛していたから……
「 翔菜姫、お待ち下さい。私達が夫婦になってまだ1年ですよ? これから懐妊されるやもしれぬのに……側室など、時期尚早ではございませんか!?」
爽は動揺つつ、ハッキリ、キッパリと己の意志を 翔菜姫に伝えた。
翔菜姫は、驚いていた。
普段は穏やかで、ほとんど己の意見というものを述べる事の少ない爽が、『これから懐妊されるやもしれぬのに……側室など、時期尚早ではございませんか!?』 異を唱えてくれた事に。
翔菜姫は。
(もう、そのお言葉だけで……大丈夫私は生きていける)
そう思ったのだった。
*神無月 十月