Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第18章 ただ者ではないお方だった……
智side
私は、城内の家臣団が住まう区画に屋敷を賜り父と共に暮らしている。
一仕事を終え、廁《かわや》にて用を足して手水場《ちょうずば》にて手を清めて。
腰をおろし。
(ふぅ)
さぁ、休むかと思った瞬間。
「失礼致します。翔禾姫様より使いが参っております」
我が家の下男が告げに来て。
(……)
-屋根裏部屋-
「翔禾姫……なぜに屋根裏部屋に呼び出されるのです?」
急ぎ、場内屋根裏部屋に向かうと先客の和也様がおられた。
「秘密裏の話ゆえ、屋根裏部屋に来て頂いたのです。和也様も智殿も。一日の仕事を終えて休もうとされていたのでしょう? ごめんなさいね」
正直、これから? と思った自分を殴りたくなった。労りの言葉をかけて頂いて、気分が跳ね上がったから。
(単純だなぁ、私は)
そんな事思っていたのだけれど。
-ジッ-
(ですから翔禾姫…… ジッと見つめないで頂きたい。 左隣りに座る和也様からの、負の感情を強烈に感じるではないですか)
「どうです? 智殿。六年前に何が起きたのか分かりましたか?」
「翔禾姫? どういう意味でしょう?」
「だって、智殿は。絵師。しかしてその実態は……諜報活動をなされている。違いますか?」
確かに私は、屋根裏に潜み、和也様と、お父上に殿様の。軒下に潜り込み潤様と、純梨の方様の。話を聞いたけども……
思わず、翔禾様を凝視していた。同じく隣りの和也様も。
「和也様まで、何を驚かれでているのです? 聡い貴方様が、疑問に思った事をそのままになさる訳がありませんでしょう?」
「はぁ、まぁ……あっすみませんっ。失礼な物言いを致しました。お許し下さい。翔禾姫様!」
「構いませんよ。今のは、私の言い方が悪かったのですから。智殿? 大丈夫ですか? 六年前に、庭師件、絵師である貴方のお父上に『跡継ぎとして、私に弟子入りしました。せがれの智です』と紹介された時に。十二で弟子入り。早いのね。と思ったのですよ」
「「六年前、翔禾姫(様)は十歳ですよね!?」」
思わず、和也様と同時に叫んでいた。
ただ者ではないお方だった……
普段は、ほんわかとされているようで……聡さを、ただ隠しておられるだけの……
*廁 トイレ
**手水場 廁近くの手洗い場