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Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系

第16章 殿様の涙1


和也side

 -殿《翔禾 姫の父親)の部屋-

 私は、父に『話をした事が御座いますゆえ、殿様の寝所に*巳の刻《みのこく》にお越し願いたい』と使いを出した。

 遅れては失礼にあたるから、と。早めに寝所を訪ねたのだけれど既に父は来ていて。障子戸を開ける旨を使いの者が告げ開けても気が付かずに、床に臥せっておられる殿様を見つめている父。

 私は、父の背中から感情を読み取ろうと、入り口にて様子を伺っていたのだが。

「和也? いつまでそうしているつもりだ?」

(気が付かれていたのか……そうだよな)

 下座に腰を下ろす父の前に(上座)座る訳には行かぬので左隣に腰を下ろして。

(殿様にも聞きたき事が……聞いて貰いたかったのだが……)

 眠られている殿様……

(仕方ない……)

「父上、純梨の方の弟君や周りの者達に屈したと見せ掛けて…… 申し訳ございません。表現が露骨すぎましたね……泳がせて…… 良い表現が見つからないので重ね重ねお許し下さい。泳がせて様子を見ながら相手方の動きを探っておられるのでしょう?」

 開き直って際どい表現を使う事にした。

「ふふ」

 父がそんな私を笑っておられる。

「殿様が病がちな事。翔禾姫様が幼い事を良い事に、色々暗躍されているのを探り証拠集めておられる」

「和也……殿様の御前で。言葉を慎みなさい」

 殿様が、上手く対処して下さっていたら…… そんな想いで言葉を選ばな過ぎた……

 反省しつつふと殿様に目を向けると。

「殿様……」

「兄上……」

 殿様が涙されていたんだ。



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