Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第69章 お母上様……終わりましたよ。
「そなたの用意した饅頭が置かれた際、雅若様は『ショウ ひめしゃ……さま わたしに おおきいほう くだ……さ……い』そう、おっしゃいました。どのように思いますか?」
(実際は、おゆりの用意した饅頭だけど……)
「食い意地の張った子供だ」
(雅若様の言葉の真意を考える事で、上に立つ者の覚悟を悟り謝罪したなら、こちらの対応も別の物になったかも知れないのに……自ら許されない道を選んだのね)
「私と、雅若様はお茶に誘われた意味を考えました。貴方は、一緒にお茶を飲む事、饅頭を食べる事を拒まれた。万が一を疑わざるを得ない状況を、雅若様はお小さいのに悟られました。饅頭を。ご自分が大きい方を食べる事で、私を助けると……私だけは助けたいとお考えになったのです」
「……」
(目の前の饅頭は、安全と知っておられたけど。覚悟のない貴方に、上に立つ者はこういう覚悟が必要なのだぞ! と示されたのよ)
「大切な弟を、そんな危険な目には合わせない。私は、雅若様より奪って自分が饅頭を食べると決心していました。 私も食い意地が張っていますからね。しかし、祖父母、父、潤兄上様、和也様、智殿、純梨の方様。初め、様々な人に助けられた。ありがたい事に」
睨み付けている外喜。
「外喜、貴方が同じ状況になった時、助けてくれる人はいますか? 己の欲を優先する余り、今、多くの者達に裏切られたのが、貴方には人の上に立つ器量も、国を統治する力も無い証拠! もう、終わりにしましょう。上に立つ者程、謙虚でなくてはならないのです。外喜殿。権力で持って人を支配し『私』の為の統治を行った。人心離れにより、不信任の訴えが多数聞かれています。幾つかの違反行為も起こした。よって、これら、数々の嫌疑を詳しく調べる事と致します。調べの間は、多聞櫓にて勾留する! 誰か! 外喜を連れて行きなさい!」
涙が出た……
霞む景色の中。お父上様。潤兄上様 、和也様、智殿に囲まれ、縄を掛けられる段になり抵抗しようとして……押さえ付けられた外喜が……
「お母上様……終わりましたよ。でも、終わりの始まりです……」