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Sの憂鬱

第5章 嬉しい出会い


ブルーシートを広げ、作業に入る彼を横目で見ながら鉢を吟味する。


デザインも質感も違う

智くんに似合いそうなのは…

って、違うわ!
対象物は『木』!

でも見れば見る程、智くんの顔が浮かんでくる。


自分の重症さに笑えた…


どうしても智くんの顔が消えない俺は、
智くんに似合いそうな "青" を選んだ。


木立:
「決まりましたか?」

「この子にはこれと、この子にはこれと、
この子にはこれでお願いします」


その横からクスクスと笑い声が…





木立:
「櫻井さん、気付いてないでしょ?」


?なんのこと???


木立:
「この子達の事、“うちの子達・この子”
って呼んでますよ」


え―――!いつから―――???


「俺、いつから………?」

木立:
「今朝のお電話の時にはもう…」


全く自覚がない………

暫し固まる。


木立:
「それが良かったんですかね?」

「へ?」


思いの外、素っ頓狂な声が出て、ハズカシイ…


木立:
「 "木" とか "植物" よりも、
"子" って思った方が、愛着が
沸きませんか?」

「言われてみれば…」

木立:
「あと…不躾な事、言っても良いですか?」

「はい、何なりと…」

木立:
「大野さんから伺ってたよりも、
ちゃんと成長してるなぁって」

「大野は何て?」

木立:
「櫻井さんは "不器用" だから、
2ヶ月で音を上げるだろうからって」


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