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Sの憂鬱

第3章 サプライズプレゼント


まるで新しい絵本をもらった子供のように
隅から隅まで見入っていた。


頁数が多いでもないその本を
何度も読み返して、自分の中で決着がついてそれを閉じ、
時計を見ると3時間が過ぎていた。

その3時間という長さには驚きはしなかった。

まるで美術館をゆっくりと見学していたような感覚だったから…。



それよりも何よりも驚いたのは、ビールにもツマミにも一切手を付けていないという事実。

クリアアサヒの缶はすっかり温くなり、缶の水滴さえも落ち、その足元に水たまりが出来ていた。


"あとがき” までしっかり書かれていて

植え替えの時期までは分からないから木立さんに聞いてね

その文の最後には、嵐で使っていた智くんのサインと
【1/1】
のシリアルナンバー。

この世にたった1冊しかない、まるで智くんの分身のようで…………


智くん



俺はその本を優しく胸に抱きしめた。




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