第16章 覚醒のトリガー
禪院を呪う事で春日家も呪っている、だから血が呪いを帯びているんだ。呪おうとして自分達も呪ってる、ただそこを見て無ぬふりをしているのか、禪院しか見えていないのか、春日一族の死んだ人達は春日を除外しているみたいだけれど…。
私は一族の人達の技を見た。全員の技とはいかずとも個性はある、皆髪を頼っていた。私はこの一族は女系、女であれば繋がり続ける呪いである、この全身に流れる血だって使いようがあると思うのに皆式髪の使役に頼っていた。
……誰一人、血液そのものに目を向けていなかった。血とは、受け継ぐもの、子孫繁栄の繋ぐもの程度で能力として利用する人を私は見ていない。
末代ほどに強くなるのなら、継がれ続けた血の方が髪よりもよっぽど強力なんじゃないのかな。
式髪は"負"を集めて、自身の白髪化した髪に呪力を貯める、スポンジとか…燃料タンクのようなもの。そんなもので相手をどうしろと。お腹が空いたというのに食材をただ貪っているような、効率の悪い事じゃないの?呪いには効いて人には効かないし……。そこが弱さのポイントだと思うんだ、私は。
相手から吸って集めて呪力を貯める。どんな怪我も、病も"負"として取り入れてる。それは呪霊に触れても、その呪霊から呪力を削り取って身体にダメージを負いながらも呪力を貯める……。
──じゃあその"負"を相手に与えれば一番良いんじゃあ…?
吸ったものを吐き出すのに、領域展開か式髪の召喚だけじゃ効率が悪い。せっかくならば…。
ざわざわと全身の血が騒いでいるような感覚。それが肯定するように脈打つ。黒い感情がまるで血液みたいに頭の天辺からつま先まで巡っている気がする。そりゃあそうか、この血だって立派に呪われてるんだから。
ぼうっとしながら新幹線の窓を眺める。窓に虚ろな顔をした自分がうっすらを映ってずっと先には流れていく景色。遠くに大きな山がゆっくりと後退して、近くの民家が後方へとひゅんひゅんと流れていく。
半透明な私の奥、隣に座る悟がじっと私を見守っていてくれている。
……ありがとう、ひとつの事をじっくりと考えさせてくれて。