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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


もうすぐ駅。新幹線を使って東京に向かう。約2時間掛かる、時間が足りれば良いけれど。今のハルカに話し掛けても心ここにあらず、無防備だから僕が守ってあげなきゃ。移動する時はしっかりと手を繋いだ。多少の会話は出来るけれども返事は遅くて、冗談を言うのは流石に辞めた。
……だって、ハルカは奥さんでもあるけど、教え子でもある。可愛い教え子の成長を阻害したくないし、成長してる今はそのまま見守るしかないじゃない?

視点を色々と考えて何かのきっかけがあれば良い。ハルカに強くなる事の出来るチャンスが訪れていた。

……ハルカ、強くなってね。でも。強くなった事で絶対に無理をしないで欲しいな。

僕の中で渦巻くもの。彼女は今のままでも充分死にやすい。もしも覚醒した術式が今よりもリスクがあるものだとしたら。より死にやすくなってしまえば僕としては本末転倒、いくらハルカが強くなっても死んだら意味がないでしょ…。卒業まで生きていられるかの生存率がより下がっていく。

新幹線に乗り込み、座席に座る。

「はい、座ろっか!」
『……うん』

タクシーの後は新幹線。座ってる時間が長いから、今の無防備なハルカも危険には晒されない。ぎゅっと握りしめた手は僕が手を緩めても離されなくて、緩めてしまった手を僕はしっかりと握りしめた。
しばらくすれば静かな新幹線内にガヤガヤと騒がしくなる、聞いたことのある声。どうやら姉妹校の連中も同じ車両みたいで立ち上がらずとも見える呪力は、歌姫や葵などを六道眼で捉えてる。

窓に映る少し虚ろな目の彼女をじっと見る。彼女は自分の呪術は弱いと過小評価しているけれど、それはまだ目覚めてないだけであってきっと今日、開花する。精神はとっくに強くてその開花を補助してくれる。
強くなれば自信を持って彼女は自ら任務に出ることを望むのかな。僕から離れて見えない所で戦う事になるのかな…。

「………」

ふう、とため息が思わず出た。窓の外の景色は流れていく、東京へと僕らを乗せて進んでる。

──以前から考えていた計画を実行するしかないのかも知れないな、と彼女の真剣な横顔を見て僕は想う。今は嫌われたくないから実行には移したくないんだけれど。

ハルカが自信をつけないような、あまり強くない力が目覚めれば良いのに、と残酷にも僕は願った。
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