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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第9章 五条求婚する


「……めっ!」
『そんな強引には見ないって』

への字口の悟。行動やオムレツの形状からして怒りに我を忘れた王蟲でも書いてるんだろ、とコンロに向き直りだし巻き卵の具材に長ネギをスライスして、第一陣をジュウウ…っ、と四角い卵焼き専用のフライパンに入れていった。
随分と熱中してたんだろう。コンロに向かう私の背後では静かでいつも騒がしい悟なのに逆に気味が悪い。そこまで悪戯に熱を入れなくても…と、完成した弁当のおかずを包丁で切り、私と悟のお弁当箱に詰め込んだ。
朝食終わるくらいに蓋をしめれば熱は取れるでしょ、とようやく振り返る。そこには悪戯の準備が終わったであろう悟がテーブル奥側でこちらを見て立っていた。
両手を広げ例のポーズを取っている悟。

「はい!すしざんまい!」
『寿司じゃないでしょう…が……?』

キメ顔の寿司屋社長ポーズからオムレツに視線を移す。
ケチャップで苦戦してたんだろう、漢字とか。少し垂れた酸っぱい匂いをさせる赤い文字は"結婚しよ(ハート)"と書かれている。

「昨日も結婚しよって言ったのにハルカ寝てただろ?」
『……なんか言ってるなー、で頭回ってない状態で爆睡してたけれどそんな事言ってたんだ…』

とっくに焼けていてほったらかしにされていた、少し熱の逃げたトースト。
それをとって悟に手渡すと受け取られ、私も自分の分を取り終えてから椅子を引いて座る。

『その件について何度も言ってるけれどあまりにも早すぎるよ。出会って間もないというか仮の期間もあっても付き合って1ヶ月程よ?
そりゃあ……私的には悟と一緒になるの、とか嬉しいよ?むかつく所も多々あるけれど一緒に居て楽しいし、あの、安心というか…、』

ゆっくりと赤い文字が崩れていくのを眺めながら話していた私。ふと顔を上げると片頬をリスのようにぱんぱんに膨らませて咀嚼する悟が不思議そうにこちらを見ていた。
片手にパン。既に大きめに何口か齧ってる。

「そんな当たり前な事言ってないで早く食べないと時間ないよ?」
『おいおい、そういう所だぞ……!全く…もうっ!』

バターを急いで塗って一口目を齧りついて。
結局、登校する時まで寮にいる間にはその話題はなくて。私は後でこの件についてふたりでゆっくりと話すべきなんだろうと思っていたけれど悟はこの時から既に企んでいたなんて思っても居なかった。
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