第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
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京都にやって来て五日目、学校生活は四日目となる今日。座学…、数学の時間中に携帯へと連絡を受け、医務室へと呼ばれてちょっとうきうきしながら走ってる。可能であればスキップでも良いんだけれどそんな悟みたいな事出来ませんし?
新田に「なんかテンション上がってません?」とツッコまれた。いや、全然?ぜーんぜんテンション上がってませんけど?という気持ちを込めたつもりで『別に?』と発した私の言葉は上擦っていた。いや、だって潰れるなら数学が嬉しいじゃんね…?
しかもだ。なんと今日の放課後は歌姫と焼き鳥の隠れた名店で飲む予定を入れてる。たれも塩もどっちも美味いらしい、そんな罪なものをビールで流し込むとかこの世にあって良いんだろうか?
……と、教室を出てから人に見られてないからってテンションは上がっちゃってるワケでして。
『やきっとり、やきっとり♪』
両手をポケットに突っ込んで気分良く通路を進み、医務室前に立ってからは気分を切り替えて。流石に見られてないよな?と左右を確認、……よし、とドアに手を掛け、そのまま医務室へと入る。
『失礼しまーす…と、』
「あっ!お邪魔してます!」
医務室に入って目に入ったのは茶色の頭部と水色の長髪、姉妹校の二年の三輪とメカ丸だった。椅子にちょこんと三輪が座り、側で腕を組んで立ってるメカ丸。明らかに三輪の方が怪我してるんだな、と理解してドアを背後で閉じ、そのまま机の方へと進んだ。
一応、聞いておいた方が良いよな……?と、引き出しを開けた所で振り返る。
『メカ丸さんは三輪さんの付添いで?』
「そうダ、ここに居ル俺が怪我ヲする訳ガないダロウ?」
そりゃあそうだよな……遅れて、ウンと頷き、用紙を一枚取り出して机に置いた。
三輪の方を向くと一見何も怪我をして無いように見えるけれど……制服で隠れてるからか、と足元から頭のてっぺんまで眺める。
すると目がばちっ、と合った瞬間に少し恥ずかしそうに身をよじりつつはにかむ三輪。