第20章 星空の下で愛を語らう
181.
アウトドア用のバーベキューコンロを安全な場所に移動して、炭の入ったダンボールから取り出した炭を火ばさみで入れていく。着火剤を突っ込んで火を着け、交互にパタパタとうちわで風を送って……着実に炭へ火を着けていった。
パチ…ッ
爆ぜる音と、うちわで仰ぐ度に艶のない炭の表面にゆらりと明るい部分が広がっていく。爆ぜる度に時々火花が網上に飛んだ。
『おっ、これは着いたんじゃないかな?』
私がぱたぱたと仰ぐうちわを悟が「貸してー」と手を出し、受け取った後になるべく下から風を送り、サングラスを片手で上げて中をじっと覗き込んでる。
「うーん、火力はまだ日光手前だねー。もうちょっと扇いどくよ」
『……………日光手前…ああ、イマイチ(今市)ってかぁ?火力安定したら時間掛かるだろうから飯ごうを先に乗せるよー』
秋とは言えまだ明るいうちから色々と済ませたいアウトドア。
砂地の上で火を扱う為に、バーベキューコンロとちょっぴり離れた位置でファイアスタンドを設置して買ってきた薪を少しずつ燃やしてる。
時刻は5時を過ぎた頃。空は薄紫を帯びたくすんだ青。
飯ごうを持ち、お米の用意をしながら周囲をぐるりと確認し、私は少しだけホッとした。真っ暗ってわけじゃない、外灯に明かりが灯っている。
『はあー…外灯生きてて良かった。いくらか虫もあっち行くだろうしねー』
汲んできた水入りのタンクのコックを捻って飯ごうの中に水を入れていると、悟がタンクの上にうちわを置いていた。
「そうだねえ。完全な闇だと遠くからオマエに会いに来た呪いも寄せられちゃうしね!
結構火力安定してきたから乗せちゃうね、ほら出して」
『ん、よろしく』
カポ、と蓋を締めて渡し、悟が受け取って網の上に置いてる。
この夕飯の支度をする前の準備としてトイレやら周囲の呪いは排除してきた。六眼のおかげもあり、割と広範囲の呪いは祓ってあるからしばらくの間は快適なハズ。
それでも夜になれば呪いっていうのは活発になるもの。早めに手を着けられる呪いを対処しておいて良かった。邪魔するものは居ない状況だけど最悪、寝てる時に奇襲されるのなら、低級ならば勝手に触れられて燃やして祓うから良いし…(その前に悟が起きそうだけれど)