第10章 12月
「………ちょっと」
「いいじゃん!気になるじゃん!」
「教えられません」
「えーーーーー。私だけ仕事ばっかりじゃん!
ちょっとでいいから教えてよ~!」
「いや、まだだから教えるもなにもわかんないよ」
結局この前水族館へ行ってご飯を食べて。
で、また送ってもらって健全に帰宅。
でもまだ付き合ってからの初めてのデートだし?
「黒尾さんって、ほんとに紳士なんだねぇ~」
アルコールと氷を混ぜるようにグラスを揺らしながら、なんだかしみじみと言われた。
「てかまだ一回しかデートしてないし」
「それでもーーー!
で、いつヤ るの?」
「知らないよ(笑)」
「今週末は?」
「とりあえず会う予定はないな~」
「なんで?!」
「いや、黒尾さん忙しそうだし」
「それでいいの?」
「まぁ今までがそんなに頻繁に会ってたわけじゃないからなー。
会えたら嬉しいけど、時期も時期だし」
「ふーん。とりあえず恋バナ♡教えてね♩」
「さおりもね」
「頑張りまーす」
さおりが美味しいと言っていたお肉は本当に美味しくて
今度黒尾さんとこれたらいいななんて思いながら。
「はぁーーーー。ずっと飲みながら話してたい」
「ほんとに。でもそろそろ帰らなきゃね~」
後ろ髪を引かれる思いでお会計を済ませて、お店を出た。