第1章 はじまり
何にもしてないのに、何時間も泣くと疲れるんだなぁ
なんて。
いつも通りの時間にアラームに起こされた、休み明けの朝。
会社、行きたくない。
だけど休む勇気も出なくて。
重い身体を起こして準備する。
メイクはいつもより念入りに。
ただ、泣いても目が腫れにくい体質でよかった。
鏡にはいつも通りの私が映ってる。
会社につけばいつも通りの私を貼りつけて
いつも通りの月曜日を過ごす。
別に会社に来ればいつも通りみんなはいるし、
小腹が空いた時用に引き出しに忍ばせているチョコレートをこっそり口に放り込めば、今日も美味しい。
ほら、別になにも変わったことなんてない。
すべてが "いつも通り"
「どうした?何かあった?」
たぶん一瞬ぼーっとしてて、何に対してそう言われているのかわからなかった。
だけど、声をかけてくれた上司に反射的に振り向く。
「え、あ、黒尾さん。大丈夫です」
「そう?何かあったらすぐに言えよ」
そう言ってくれる黒尾さんの目はなぜか見れなくて
PCにむかって、ありがとうございますと返事をした。