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【ハイキュー】思い出すのは、いつも【黒尾鉄朗】

第8章 海で


そんな顔してたのか。


ほんっと。

情けねーな。





「私、会社の時と違いますよ?」



「どんな風に?」



「すごいわがままだし、ズボラだし、朝は起きれないし」



「うん」



「だから、付き合ったら。

黒尾さん、こんなはずじゃなかったって思うかも」



「なんで?俺が知らない佐藤のこと、これから知っていけるってことでしょ?」





楽しみ以外のなにものでもない。





「私で、いいんでしょうか……」



「うん。何度でも言うけど、佐藤じゃなきゃ嫌。

今言ったことを心配してる?」



「……はい」



「大丈夫。わがまま、言えばいいじゃん。

もしかしたらケンカすることもあるかもしれないけど。でもその時はちゃんと話し合って、仲直りしよう。

付き合うって、そういうことじゃないの?」



「………はい」



「何度もゴメン。でも、もう一回言うわ。

俺と、付き合って下さい」





また、長い沈黙。



冬の陽は沈み始めてからは早い。



オレンジ色だった世界は、薄い藍色からやがて

濃い藍色へ変わりはじめていった。



そして。





「………よろしく、お願いします」





波の音に負けそうなくらい、小さな小さな声が聞こえた瞬間。

俺の手の中にあったはずの缶コーヒーが落ちて、鈍い音が波音の中に響いた。
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