第73章 海で(黒尾)
「………なんでそんなに涼しい顔してるんですか?」
ジトっと見てくるのを
笑っちゃいけないよな~って堪えて。
「朝はちょっとだけ涼しいよね」
「いや、そういうことじゃなくて」
ですよねぇ(笑)
「大丈夫?(笑)」
「全然心配してないくせに………」
いや、心配してないことはないよ?
隣にしゃがんで
ゼエゼエと息が切れている奈々の背中をさする。
「座る?」
「そうします」
「あ、スカート大丈夫?」
「大丈夫です」
二人で海に向かって座る。
朝の海って本当に気持ちがいいな。
「はぁ………
いつまでも若い気でいますけど、
あっという間にアラサーだし
運動なんて通勤の自転車くらいだし。
このままどんどん年老いていくのかと思うと
ちょっと悲しいですね(笑)」
…………。
さっき、今日はもうプロポーズはいいかと思った。
だけど、コレは………
右のポケットの指輪を意識する。
「………ただ、俺は。
奈々と一緒に、歳を重ねたいと思っていますけど?」
とりあえず、様子をみてみる。
「それってプロポーズですか?(笑)」
………ウェ?!
ちょっと待って?!
隣の奈々は笑ってるし
たぶん、そんなつもりもないんだろうけど。
そんなことを、言われたら