第71章 帰り道
「………いやね、なんかさ。
4月に久しぶりに会ったら、髪。
切ってたじゃん?」
「そうですね?」
「で、チャリも替わってるじゃん?」
「はい………?」
「なんか、俺の知ってる奈々と
ちょっとだけ違うのかァなんて。
なんか、なんていうか、ウン。
感傷的、ではないんだけど
なんかね、ウン。
ただ、俺の知らない時間が
ちょっぴり寂しくなったりしちゃったワケですよ」
少しだけモゴモゴと話す黒尾さん
だけど、黒尾さんが言いたいことは私だって一緒。
「私だって。一年分
私の知らない黒尾さんがいるって。嫌ですよ?」
「そ?」
「当たり前です。
だから、その時間を知っていくのが
今はすごく楽しいです」
黒尾さんがなぜかちょっと驚いて
そしてホッとした表情。
「そっかァ。そーだよなァ」
ハハッて笑ってる。
「でも、お前がまだミルクティ好きだって聞いて
なんか嬉しかった」
「相変わらず、ずーっと飲んでますよ?
もう殿堂入りです。
だから、差し入れはミルクティで大丈夫ですよ?」
笑いながら差し入れのリクエスト
「りょーかい。
ちなみにさ、一緒に仕事して時。
よく食ってたチョコレートあるじゃん?覚えてる?」
「あ、はい」
「あれは?さすがに変わった?」