第64章 間違い探し
本当は、すぐに返事を返さなければと思っていた。
だけど俺が返事をすれば
当たり前だけど全てが終わる。
いや、もう終わったも同然なんだけど
それでも。
どうにかならないのか、と。
ただ、一日考えてみたものの
どうにかなりそうな方法は、何も思いつかなかった。
だったら、せめて
奈々が望むように
なんて。
でも、そんな風に考えないと
自分を保つことができなかった。
だからその後、
奈々が、二人が、
どうなったのか。
気になってはいたものの
どうしても、受け入れきれる自信はなくて。
だけど、4月
一年間の研修期間が終わり、戻ってきて
その時もまだ、諦めきれていなかったけど
髪が短くなった(名前)を見て。
あぁ、止まっているのは俺だけだ。
いい加減、諦めなくては。
前に、進まなくては。
と。
本当に
いい加減、いい年したオッサンが
諦めきれずにうだうだ悩んでいるわけにもいかない。
だから「今彼氏とかいるの?」って
ほんと、いいオッサンなのに
"勇気を振り絞って" 聞いてみたのに。
………なんだか様子がおかしい
「いや、いませんけど」
想像していた返事と違う、と感じたのは
佐藤の言葉がキレ気味だったこと。
だけど、その後
辛いことがあったのかもしれない。
「そっか」
だけど
「黒尾さんって、結構残酷なんですね」