第58章 5月上旬
予告通り、20分後
本日2度目の内線
そして外線に繋ぐと、もう着いたという赤葦さん。
ただ
「すみません。一件だけ急ぎがあって
少しだけお待ちいただけますか?」
『もちろんです。
こちらの時間は大丈夫なので、終わられたらお願いします』
「申し訳ありません」
上司お得意の
件名に「至急」と付いたメールが今しがた。
見てしまったから、対応しないと気持ち悪くて
たぶんすぐ終わるやつだし。と
赤葦さんのお言葉に甘えて急いで対応する。
予想通り、まぁまぁな時間で対応できて
報告のメールを送信して
準備していた紙袋を持って
急いで赤葦さんの元に向かう。
エレベーターを降りて
玄関ホールを見渡すと
あ、赤葦さん!
………と黒尾さん
………なんで?
何か二人で話してる様子
…………嫌だな
子供じみた、正直な感想
だけど、これ以上赤葦さんを待たせるわけにもいかない。
ひとつ、深呼吸
…………無理
あと2回
「…………はぁ」
二人の元に近づく
先に私に気づいたのは、赤葦さん
「あ、お忙しいところ本当にすみません」
「お疲れ様です。お待たせしてすみませんでした。
………黒尾さんも。お疲れ様です」
「………お疲れ」
赤葦さんがいるから
最大限、何事もないように努める。
いや、何もないんだけど。
だけど、別れた後
2度目の黒尾さんは
まだ、慣れない。
赤葦さんにサンプルの入った紙袋を渡して
中身を確認して、ホッとする赤葦さんを見て
思わず私もホッとする。
「本当に助かりました」
「いえいえ、こちらに届いていてよかったです。
………あの。
ちなみにお二人は、お知り合い?なんですか………?」
そのまま戻ることもできたけど
だけどやっぱり、気になって。