第57章 4月下旬(おにぎり宮)
「ちなみに佐藤さんは?」
「あ、独身です。
ちなみに独り身エリートになりたくて、現在修行中です」
「ん?」
「失礼しました。自虐です。
彼氏もいないし、このままずっと一人な気がするので。
こうやっておひとり様を楽しんだり、今修行中なんです」
笑いながら答える
「もったいないですね」
「なにがですか?」
「佐藤さんを放っておく、まわりの男性が」
赤葦さん、いい人だな~
フォローに泣けてくる。
「スミマセン。そんなことを言わせてしまって」
「本心ですよ?佐藤さんと一緒に仕事しているからこそ思います」
一緒に仕事していた人に捨てられました。
とは、流石に言えず
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる。
「だけど、私。
今まで二人の人とお付き合いしたことあるんですけど、
二人とも浮気されて別れてるんですよ(笑)
怖くて、どちらともきちんと話さずに別れたので、
詳しいことはわかんないんですけど。
だけど、めんどくさくて。
つまんなかったんだろうなーって思います」
どんどん自虐が得意になる。
「見る目ないですね。
二人とも、今頃後悔してると思いますよ」
…………。
もし、そうだったら。
…………。
でももう "もしも" は考えない
「そうだといいですけどね~(笑)」
やっぱり笑いながら
そう、答えた。
「………佐藤さんって、お酒飲めますか?」
「あ、はい。人並みには」
「一杯だけ、付き合ってくれません?」
「喜んで」
それから赤葦さんと、今までの仕事のこととか
それ以前のこととか。
そしてまた、恋愛の話。
初めて、黒尾さんの話もした。
もう自分の中で大丈夫だと思ったし、
大丈夫だった。
ウン。今までよく頑張りました。
もう、大丈夫。