第53章 12月.2
ゆるゆると緩みそうになる口元を
ギュッと結んで、必死に堪えて。
【今日はもう終わりました。
だから一緒にご飯食べれないかな~と思ったんですけど。】
まわり道はしない
まだミルクティ、残っててよかった。
なんて思いながら、返事を待つ
またパッと画面が光ったかと思うと
今度は着信。
「もしもし?お疲れ様です」
『お疲れ様。奈々ちゃん久しぶり。
そしてお誘いありがとう』
2度目の一静さんの声
久しぶりで、
こんな声だったっけ?なんて
「忙しい時期にすみません。
つい連絡しちゃいました」
『嬉しかったよ?今会社出たんだけど、
この前の駅まで来れる?
それか奈々ちゃんが帰り近い駅でもいいけど』
「じゃあこの前の駅で」
『わかった。ちなみに今どの辺?』
「会社の近くで寄り道してました」
『たぶん俺の方が早いと思うから、着いたら連絡してくれる?』
「わかりました。急いで向かいますね」
『大丈夫。ゆっくりおいで』
「………ありがとうございます。
じゃあまた連絡します」
少しだけの通話時間じゃ
もちろん、ミルクティの熱さはほとんど変わらなかったけど。
だけど、また一静さんと会えることに
多少なりと嬉しいなって思っている自分がいて。
急いで身体の中に流し込んで、駅に向かう
ついさっきまで、私の心を憂鬱にしていたイルミネーション
………あ、綺麗
なんて思う自分に気づいて、ひとり苦笑した。