第51章 誕生日
昨日の夜、私たちの目に映っていたのは
たぶん、お互いじゃなかったと思う。
お互いの名前を呼びながら
それぞれ別の人を映してた。
だけど、そんなことはどうだってよくて
たぶん、お互い
"一人じゃない" ってことが重要だった。
寂しいのは自分だけじゃない
辛い思いをしているのは
自分だけじゃない
その寂しさと苦しさを埋めるように
よく知りもしない相手と、唇と肌を重ね合って
きっと、大丈夫だって
………なにがなのかは、わからないけど。
ただ、その時だけでもいい
"必要とされている自分" に
安心したかったんだと思う。
ただ、昨日の夜は
お酒にも雰囲気にも酔っていたけど
どこかで、明日の朝
………今日のことを考えている自分がいた。
初めて会った人とこんなことをして
冷静になった時の虚しさとか。
自分ができるだけ傷つかないように
何事も予防線を張る癖があるんだけど。
だけど今、意外とそんなことはなくて。
理由はよく、わからないけど
そういう相手が、一静さんでよかったなって
そんなことを思った。
そして、彼氏以外と初めてシたけど
そこに愛なんかなくっても、
普通に気持ちいいんだなってことも知った。