第46章 9月2日
ドアを開け、
知らないフリをしていた香りに包まれた瞬間
アレコレ考えてみたけど。
そんなことはどうでもよくて。
…………っ。
黒尾さんに会いたい
黒尾さんと話したい
黒尾さんの、声が聞きたい。
愛してるって、
お前のことがどうしようもなく愛おしいって。
その言葉の意味は?
あの言葉は嘘だった?
私にむけてくれた、あの表情は?
ぜーんぶ嘘?
ねぇ、黒尾さん?
黒尾さん、黒尾さん、黒尾さん。
もう届くことはないのに
初めて、声を出して泣いた。
昨日となにも変わらない。
ただひとつだけ違うのは
もう黒尾さんの隣にいれないということだけなのに。
世界は昨日となにも変わらない。
それ以外は、全て今まで通り
いつも通りなのに。
息が、できない。