第46章 9月2日
いつも通り顔を洗って準備して、
朝食を食べて出勤する。
いつも通り挨拶をしながら席について
メールを確認して、
いつも通り仕事をこなしていく。
フロアにいるメンバーは昨日と変わらないし、
社内にいる人数も
きっと昨日と変わらない。
黒尾さんは、
昨日も一昨日も
その前も。
もうずーっといなかった。
大丈夫、大丈夫。
お昼休みはいつもの時間とズラして
みんなが戻ってくる頃に出て行く。
社内でも普段から特に人気が少ないベンチへ
……………。
なんでここに来てしまったんだろう。
婚約破棄の後
ここにいた私のところに黒尾さんが来てくれて、
湯気が立つミルクティを渡してくれた。
自販機の前で "冷たい"
ミルクティのボタンを押そうとしている自分に気づき、
そっと別のボタンを押す。
私は極端な性格だから、
好きだと思ったら飽きるまで同じものを飲むし、食べる。
黒尾さんは付き合う前から
そんな私の偏った好みに気付いていたらしく、
あいつ、いつも同じの食べてるな
飲んでるなって思ってた。
って。
笑いながら話してくれた黒尾さんまでセットで思い出す。